✿ 第3回桜区市民講座
原発事故と向き合う若者たち
ベラルーシの高校生との交流から学ぶもの
講師 安藤聡彦 氏(埼玉大学教育学部教員)
川尻剛士 氏
(埼玉大学大学院教育学研究科)
2017年7月16日  土合公民館


第3回桜区市民講座  7月16日、講師に埼玉大学、教育学部教授の安藤聡彦先生と院生の川尻剛士さんをお迎えして、「市民講座」を開催しました。 人と人が出会って交流することの大事さを改めて確信する学習会になりました。

§・現地訪問から若者交流へ
 安藤先生の専門は環境教育です。3.11の原発事故で衝撃を受け、これまで問われなかった「チェルノブイリの原発事故と教育」について考え、反省するようになりました。 チェルノブイリ原発事故で最大の被害を受けているベラルーシ訪問を何度も重ね、ここから「若者交流」という発想が生まれ、訪問の三回目には日本の大学生5人が参加しました。 今年の3月には、ベラルーシから高校生を招いて、東京、福島市、いわき市を訪れ、現地の若者たちと交流会を実施しました。
 交流会に参加された川尻さんからは、ベラルーシの訪問で見聞きしたこと、高校生を招いての交流会でのデスカッションで学んだことなどを報告していただきました。
チェルノブイリ原発  現地で訪問したプリピャチ(原発事故後街がそのまま放棄され、ゴーストタウンと化している)、ハティニ線跡(第2次世界大戦戦跡、 バラルーシはナチスドイツの残虐行為による最大の被害地域)について、写真を示しながら当時の当時の原発事故の破壊力について報告してくれました。 訪問先では、飯館村民からもらった種から育てた「雪っ娘ハボチャ」とリンゴをブレンドした手作りのジュースをご馳走になり、ベラルーシの人々の温かい心づかいを感じたそうです。 自分たちもとてもひどい経験をしながら、福島にも心からの同情を寄せてくれる姿から、他者の〈痛み〉を我がごととして引き受ける文化を感じたこと。 住み慣れた家・故郷から離れ、避難しなければならないという経験の痛切さなど、 実際に現地の人から直に話を聞かなければ分からない貴重な感想を、若者らしい感性で語ってくれました。

§・若者交流会で問いかけられたもの
 日本での交流会で、ベラルーシの高校生から、「なぜ日本の人々は原発を巡って語り合わないのか?」と問いかけられました。 この問いに対する戸惑い。 日本の高校生は等身大の話し合いが出来ているのか?それを困難にしているものは何か?これらは、私たち全員が共に考えていく課題だと思いました。 今後の課題として〈地域、国境、世代、民族を超えて、語り合いつづけることの大切さ〉〈生き方の問題としての「脱原子力社会」〉〈教師の市民性を育てること〉などが 挙げられました。


会場写真

(参加者からの感想)
・川尻さんの真摯な取り組み、安藤先生の広い御視点と学生さん想いのご活動に大変感銘を受けました。 リアルな体験、個々の人間が見える活動の報告をとても関心を持って伺いました。
・「知識人」という言葉からは、E.Wサイード想起しました。大事だと思います。
・大変良い機会でした。埼玉大学の先生や学生さんたちが、ベラルーシの方々と交流されたことはすばらしいことです。 私たちにとってもそこから学べることは大きい。今後に期待します。教育基本法の問題に突き当たったことも重要。
・ベラルーシの現状について知ることができました。現実を直視することが大切だと思いました。
・初めて参加させていただきました。とても参考になりました。
・二人の話、とても参考になりました。
・大変良かったです。今までチェルノブイリの事故のことは漠然としか知らなかったが、今日のお話しで身近なものになったと思います。 安藤先生、川尻さんありがとうございました。
・ベラルーシの人々の暖かさに感動しました。
・教育者の本音が聞けてよかった。
・実際にベラルーシを訪れ、見聞した重い現実にふれ、原発事故の深刻さ、甚大さに気がめいりました。 安藤先生は環境教育を研究する中でベラルーシと日本の若者の交流をすすめておられ、非常に大事な取り組みだと思いました。 川尻さんの報告で、印象深かったのは「日本の高校生は等身大の話ができていないのでは?」と言う疑問です。 周囲の空気に敏感で、傷つきやすく優しい、最近の子どもの姿が垣間見えるようでした。 やはり自ら考え、行動できる若者を育てることが、未来のために必要不可欠だと感じました。(M・Y)

(安藤氏からのメッセージ)
拝復
 こちらこそこのたびは、学習会にお誘いいただきましてありがとうございました。
 自分も院生時代からずっとそれぞれ住んだ地元での学習会等の市民活動をずっと続けてきました。 ですから人を集めることの大変さ、とりわけ連休中にそうすることの大変さは身に滲みて分かっております。 先日は十分たくさんの方においでいただき、僕自身も川尻君も議論から様々のことを学ぶことができました。あらためて心から御礼します。 アンケートについても、興味深いです。こちらも御礼申しあげます。
 地域と大学がつながることはとても大事なことと思っています。 大学のなかでも地域の方々とつながっていろいろなことをやりたい、という声は小さくないです。 これからもこちらこそお世話になることがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(川尻氏からのメッセージ)
 先日は桜区市民講座でお話させていただく機会を頂戴し、大変ありがとうございました。
 当日は少し緊張してしまい、皆さまに伝わるようにお話ができたかどうか、終わってから反省していたのですが、 皆さまからのアンケートを拝読して、少しでも意味のある会になっていたのであれば幸甚に存じます。 私にとっても大変意義深い時間となりました。心より御礼申し上げます。
 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。