11月20日、第2回市民講座を土合公民館にて開催いたしました。講師は基礎経済科学研究所・東京支部役員の子島喜久氏。
「今、憲法を考える─イロハから学ぶ憲法」と題して講演をしていただきました。憲法のイロハとしては、少し難しかったかもしれませんが、内容は充実したものでした。(編集部)
§ 平和とは力を合わせて生きること
もともと平和(Peace)の原義はPieceで、「同意する」という意味があり、争いをなくすためには相互理解と会話を通じて同意することが平和であり、協力して力を合わせて生きることです。さらに現行憲法は長い戦争と多くの犠牲の中で制定された大切な平和憲法で、憲法は権力を行使する者が従わなければならない行動規範です。
日本国憲法の精神を端的に表している憲法前文を示して、第1段階では基本原理の、国民主権〔日本国民は主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する〕を規定しており、第2段階では恒久平和〔日本国民は平和のうちに生存する権利を有することを確認する〕、第3段階ではこの憲法の普遍性を述べ、第4段階では日本国民は国家の名誉にかけ、全力を挙げてこの崇高な理想と目的を達成することを誓っているとも指摘されました。
また国民主権にかかわる憲法第92条は、「地方自治の基本原理」を規定しており、地方自治とは住民自治を意味しており、住民自治とは「地方の自治は住民の意思に基づいて行われ」、民主主義を基本にした規定です。沖縄での基地の押し付け、原発再稼動問題など、住民の自治が踏みにじられている現状はきわめて重大で、その地域だけの問題ではなくて、私たちの権利侵害だということです。
§ 国民の支持を受け定着した憲法
憲法の制定過程についても触れて、鈴木安蔵・高野岩三郎などの憲法研究会の憲法草案、連合国軍最高司令官のマッカーサーノート(3原則のうちの一つが、第9条のもとになった戦争放棄に関する原則)と芦田修正と幣原の合作(戦争の放棄をうたった九条はマッカーサーと当時の首相幣原の合作)など、様々な提案がなされ議論のうえ、さらに憲法制定国会では40日間も審議されて制定されたと話されました。国民の支持を受け定着したのが現行憲法です。
§ 草の根から護憲の活動を
憲法の基本原理は三位一体(「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」)であり生命原理であるからこそ、公務員たる国家権力を行使する者には憲法尊重擁護義務が課されています。ところが、憲法66条2項の文民統制条項が「理の政治」から逸脱しようとする危機的な状態にさらされているとの現状認識にたって、現行憲法の精髄を形骸化させることなく擁護することが求められていると強調されました。そのためには憲法を自分自身のものとして、草の根的な平和運動を作り出し、市民組織や労働組合、NPOなどと連帯すること、それを後世に継承させていくことが課題であると結びました。
その後、参加者32名で質疑討論を行いました。今回も多数の方の参加を得て、講演会を行うことができました。若い方の参加が多く元気が出ました。

講師の子島喜久氏は桜区在住で、昨年『護憲論──憲法学の方法・国民統制による文民統制』を関東図書から出版されました。
「国民統制による文民統制」とは、国民の力で政治を担っている文民(政治家や官僚など)を統制するという意味だそうです。この本を出版されたのは、
憲法の精髄を明らかにすることで、先の大戦での多くの戦争犠牲者やその遺族を思うとき、私たちは憲法の精神をぬがめることなく擁護して、考察を進めるためだそうです。
そのためには、憲法の規定が平和憲法であることを前提にして、後世に憲法の精神を継承していくためにも、社会科学の立場からも、
日本国憲法を生きている憲法として肯定的に認識することが重要だと提言されています。
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