✿ 第1回桜区市民講座
アベノミクスとは−あなたの生活はどうなる?
講師 結城剛志 氏(埼玉大学経済学部准教授)
2016年6月19日  土合公民館


 6月19日(日)当日は、34名の方が参加。
 多くはチラシを見ての参加者で、当日初めてお会いする方がほとんどでした。結城先生の講演の概要を紹介いたします。

 参議院選挙の前、安倍首相は記者会見をし、アベノミクスは道半ばであり、エンジンを最大にふかしデフレからの脱出を目指すと宣言いたしました。 そもそもアベノミクスとの三本の矢とは何だったのでしょうか?
1.大胆な金融政策、2.積極的な財政政策、3.民間投資を喚起する成長戦略でした。

 この、アベノミクスとは包括的かつ大胆な経済政策であるが、しかし経済・金融政策はタダでできるものではなく、税金・借金(国債に発行)の大規模な投入で可能なものです。 この4年間で支払ったコストは320兆円。これは政府の借金だが将来は国民が支払わなければならないものです。 この政策で国民の暮らしはどのようになったのでしょうか? 雇用を創り出し、所得が増えたのでしょうか?

 このアベノミクスでは、デフレからの脱却をして国の富を拡大しようとしていました。 ところが、物価上昇を織り込めば資産家は投資するが、一般の人たちは消費を控えることになってしまう。 経済政策には、長期にわたって人々が安心して暮らし働ける環境づくりが求められるのに、なぜか直接生活を良くする手段をとっていない。 むしろ、実質賃金の低下・世帯収入の減少、生活保護費の切り下げ、子ども手当の削減、労働者派遣法や労働契約法による非正規雇用の増加など、 不安を増す方へと政策が進められている。

 平均所帯所得は減少傾向にあり、非正規労働者の比率が37%にも達し、平均賃金(月額)は正規労働者の37%少ないという。 景気が良くなったからといって生活が良くなる構造にはなっていない。 株や不動産が値上がりすることによって潤うのは、株や土地を持っている人で、持たない人との間の格差が広がってしまっている。 人は景気で暮らすのではなく所得で暮らすとの指摘に納得です。

 アベノミクスは大企業・富裕層優遇政策との批判に、政府が持ち出してきたのが「トリクルダウン(富が滴り落ちる)」効果です。 企業と資産家が儲かる⇒儲かったお金を使う⇒庶民も潤うはずと言う理論だが、 これは希望や期待に過ぎず、経済学的に証明されたことはないとのことで、実際このような現象は起こらなかったと指摘されました。

 また、マイナス金利の導入は、庶民の金融資産への利払いを激減させつつ、企業の投資拡大、庶民の消費の増加を狙ったものだが、 これまでの金融政策の失敗を国民に取らせようとするものだという指摘もされ、経済政策を丁寧に説明していただきました。 参議院選挙の後に、株に年金基金を投入して5兆円もの損失を出したことが報じられたが、先生はこの株式投資の失敗を講演会で既に指摘されていました。

 結城先生は安倍政権の経済政策のさまざまな問題点を指摘され、質問にも丁寧に答えていただき、第1回市民講座は盛会のうちに終わりました。


会場写真